及川 茂の管理講座

種鳩の選定について
 種鳩の選定ポイントですが、その鳩舎が中距離を主体にするのか、長距離を主体にするのかの点で難しくなってきますが、私の場合まずオスは、翔暦が中心になり、特にスピード性を重視します。

 メスの場合は、体形を中心に選びます。100%完全な体形。バランスがとれていて手持ちの良いもの。
羽も長すぎず短すぎず、体は大きすぎず、小さすぎず。系統を何代もひくものは、馬でも犬でも、メスの血が重要です。メスを一定にしないで選ぶと、出来る子供がバラバラになってしまいますので、メス自体は記録鳩でなくともかまわないですから、バランスの良い、外見上欠点が少なく、血統のよいものであればベストです。
                                      
 種鳩の目というのは、深い輝きをもったもの、つまり色素の濃いものが良いようです。口で説明するのは難しいですが、粒子が細かくて多くの色が混ざり、複雑になればなるほど良い。配合する時は、なるべく同じ色の目を持つもの同士はかけないようにしています。例えば若大将の系統は、目がギラギラしているという事で一般に知られていますが、光ったような柿目のギラギラしたもの同士をかけていくと、赤銀目に出てしまうんです。

若大将系の特徴である柿目に戻すためには、色素の濃い柿目をかけると、また光った柿目に戻るんです。
柿目にも色々ありますが、同じ柿目でも明るい色と濃い色のもの、赤い色のものと黄色のもの、という具合になります。
配合について
 交配に移る時、自分の選定基準にかなった中から、例えば長距離の長めの体形には短距離の逆三角形で筋肉隆々ものをかけていくというように、タイプの違ったもの同士をかけあわせる、一般的にそれがいいと言われています。しかし私はそうしません。短距離タイプには短距離タイプを、長距離タイプには長距離タイプをかけています。

スピードにはスピード、ネバリにはネバリのトリを、その結果スピードタイプのトリ同士からよいトリが出れば、ネバリも自然に出てくる。これは私の持論でもあります。足して2で割ったトリなどめったに出来ない、両方が半減してしまう、その可能性がずっと多いからです。

一般には勧められない極端な方法かもしれませんが、どうしても1位をとる、そういう気持ちで私は配合しているつもりです。なぜなら日本の受賞システム、一般の方の鳩に目を向ける方向というのは、1位しか重んじない、そのような傾向があるからです。エースピジョン的な上位に何度も来た鳩というのはすぐに忘れられてしまいます。とにかく1位をとれるように、スピードと追っていく、それが日本鳩界の現状です。

 しかし次のように考える事も出来ます。総合1位のトリは、10回レースがあれば、必ず10羽出ますが、
総合シングル2回、3回というトリはそう簡単には出ないということです。
                                   
 初めに言ったように、スピードがあるかないかという視点も重要ですが、
現在、私の鳩舎に異血を導入する時、また自鳩舎の鳩を種鳩にする時は、この点も考慮に入れています。
                                                                                                       
種鳩の管理について
 どんなに良い種鳩を導入しても健康でなければ、飛ぶトリは出ません。
規則正しくエサを与える、水浴びは新陳代謝を良くするために週に1度、虫下しを6月と12月年2回、
抱卵して7日〜10日してからトリコモナスの薬を与え、ワクチンも定期的に接種するなどですが、
こうした規則正しい管理は飼育者の生活のリズムに無理なく組みこまれているかいないかに関わってきます。
                                                             
 さて、水浴びの場合ですが、寒くなれば当然温浴にしますが、特に選手鳩が帰還した時等を見ると
お湯の方が浸っている時間も長いようですし、疲れをとるということでは効果があると思います。
余裕のある方はお湯に日本酒を少し混ぜて、マッサージしてあげればより効果があると思います。
とにかく疲労がたまることは病気につながるということです。

 私の鳩舎では羽数が多いので、ベルギーの薬で鳩をリラックスさせる効果があるものを、
温浴に限らず水浴びの時にも混ぜています。水浴びの薬で羽虫も予防、駆除できます。
夏などの場合は羽虫が多くなりますが、バートザルツとゆう水浴剤で駆除できますので、
バートザルツを使っています。

 去年配合された種鳩は6月に分離させていますが、休養にあたるその時期のエサは、基本の量を1とすると、
大麦を1/2、普通の配合飼料を1/2。その割合が12月まで続きます。
そして、うちの場合は2月の10日前後、晴天の暖かい日を選び交配に入るわけですが、
交配の一ヶ月程前から、今度は大麦を少しずつ減らしていきます。
3週間程で、配合飼料の割合が1に戻るようにしますと、種鳩の調子はだんだんと上がっていきます。
                                                         
 作出前には弱性石鹸で巣箱を掃除します。
巣箱はオスの種鳩の部屋にそれぞれあてがわれているので、そこに毎年違うメスをつけていくわけです。
メスの種鳩の部屋にも巣箱は一応、設置してありますが、メス同士でつがいにならないように普段は閉じておき、
止まり木だけを使用させます。

 抱卵して一週間目位で検卵します。ヒナが孵り始める一週間程前から、置きエサの分量を、
オリジナルAAの配合飼料2割、小粒A8割にしていきます。
少し余る位にあげた方が良いでしょう。もちろん鉱物飼料、ミネラルやカルシウムも欠かさないようにします。

 2回から3回続けて交配させ分離するわけですが、よくそんなに続けてとって大丈夫かと言われます。しかし、半年遊んでいるトリがそれくらいで卵がとれなくなるようでは健康ではないと思っていますし、その位続けてとれるように管理しなければならないのだと考えます。

 1番仔と3番仔を比べて、3番仔の方が全体的に出来が悪いなどという場合は、年間の管理、分離の時期に失敗したということです。分離してからの管理はレース中と比べると飼育者にとって刺激が少ない事もあり、おろそかになりがちですが、先程話したように、この時期は特に一生懸命に管理しないと作出する時に良い仔は出来ません。

                                    

春季レースへのステップ

 ヒナが孵り、育雛させている時に、生後2周間位からですが、巣箱の点検もかねて、ヒナを毎日さわってあげるようにしています。そうすると人間になれてくる。若大将の系統はだいたい神経質な気性が多い事もありますが、脚環をいれる時以外一度もさわらなかったり、巣箱から取り出さなかったヒナというのは人間に対して神経過敏になってしまいます。掃除といってもフンを取る程度ですが、その時、ヒナの入った巣皿を取り出してさわってあげ、その他の時間はそっとしておきます。

 ヒナの羽根を上げて、横腹の肌が見えなくなった頃がだいたい生後25日位ですから、親から離し、5日間程、昼間は展望台のある巣立ち室におき、その間トラップ訓練も繰り返します。そして巣立ちして30日目位に表に出します。表で遊ばせる時も、呼んだらすぐに入舎するようにエサを8分目程度に抑えておきます。8月に行う強制舎外に遅生まれの仔が丁度間に合うように作出も切り上げます。
                                                      
 ワクチンの接種もこの時期に済ませます。薬はなるべく使いたくないというのが正直な気持ちですが、病気になってから治療薬を使うよりはまず、予防薬を必要最低限上げて病気の予防に努めることも大切です。
                                                        
 そういう意味でレース帰還後には必ず薬を投薬します。私の場合、コクシとトリコモナスを一種類ずつ、帰還翌日に交互に与えます。例えば春季最初のレースに帰還した翌日、コクシを3日与えたら、次のレース帰還の翌日にトリコモナスを3日投与するといった具合です。400Kレース帰還後からは、翌日から連続3日間になります。


 8月1日からの強制舎外に向けて、4月〜7月は舎外に慣らすことに専念します。
梅雨期が終わるまでは夕方1日1回。
電線や、ビルの上に止まったりする悪い癖を持ってしまったものは早期に隔離して舎外に出さないようにします。
この癖はいったんついてしまうと直る見込みはないでしょう。成鳩の場合も同じことですので、
舎外時に気をつけて観察し癖が出たらすぐしまうようにします。


 8月から初めて朝、晩の舎外に移ります
。そこから強制していくわけです。
8月の暑い時期はなるべく朝早く、4時30分頃から始めるのが良いでしょう。
夏に限らず、舎外を朝、日の出の頃から始めている人に強い人が多いようです。
午前9時から10時に飛ばす1時間と明け方少し前に飛ばす1時間では同じ時間飛ばしているにもかかわらず、
倍以上の効果の差があると思います。周りの静かな明け方に、自分たちの羽音にビックリしてもの凄いスピードで飛ぶからです。

 しかし今まで9時〜10時に飛ばしていた人が明日からは夜明けから鳩を飛ばそうとしても、鳩が出て行かないでしょう。そういう時は徐々に慣らしていかなければなりません。
                                                             
 さて、徐々に舎外時間を伸ばして飛ばしこむのですが、この時期は若鳩だけで飛ばす方が飛びが良いですから、成鳩を休ませるのは、理にかなったことなのです。私の場合、エサはトウモロコシ、エンドウ、大麦などの大粒を主体にしたものと、配合飼料を合わせて、基本的に1年中同じものを与えています。出きるだけ種類が一つに偏らないように。値段が高いからといって、バランスを考えない給餌では逆効果です。夏のこの時期には若鳩を鍛えあげるため、8月から9月は大粒の割合を7割に増やし、筋肉増強の効果をはかります。

 若鳩の場合は、8月の半ば頃から基礎訓練を15K位の近い所から開始し、毎週、徐々に距離を増やしていきます。そうして、9月〜10月の連合会、連盟の合同訓練をしておけば、失踪は少なくなるでしょう。

 春季レースが例年5月10日前後に全て終わると、1000K帰りで残った選手鳩には一ヶ月程休養させ、
巣箱に愛着を持たせるため、すでに6月頃子供を直抱きでとらせています。

 7月に子供を育て終わっても、舎外も一切やらず、雄・雌を分離してしまいこむのですが、そうすると、換羽もきれいに終わるような気がします。

私の鳩舎では、成鳩部屋は巣箱が主体で、若鳩部屋は止まり木のみです。止まり木だけなのは雌の種鳩と同じように、つがいになるのを防ぐためです。
                                                                         
 秋季の500Kレース終了後に、7月頃から11月一杯分離した成鳩を再び戻して、12月始めから1月にかけて、残った若鳩と一緒に舎外をかけます。そして今春この若鳩の中で1000Kレースに帰ったものだけが、巣箱主体の成鳩部屋に入ることが出来るのです。

 成鳩の場合、レースから半年以上のブランクがあるわけですから、春のレースが始まる前に一度訓練に持っていかなければなりません。

 レースがこれから始まることを教えるためです。さあ、春季レースもそろそろ突入してきます。


レース鳩の調教について
 レースに最良の状態、調子の上がった状態でトリを参加させるために飼主は調教をするわけですが、調教のポイントは各人によって違ってきます。

 管理の中で調教とは、鳩の調子の波を管理者が自由につけられるということです。鳩なりではなく、飼主がコントロールできなければなりません。
                                         
 私の場合は調教のポイントを舎外に置いています。もちろん訓練も、要所を押さえるためにかかせませんが、普段どちらに重点を置いていくかが問題です。

大きい鳩を主力に持っているところは訓練をみっちりかけなくてはならないでしょう。
私の鳩舎はだいたい小型のトリが多いですから、舎外だけでも十分に調整が出来ます。
その時、エサの量と舎外の量との調整を変えることで波をつけるのです。


 舎外を調教のポイントに置くには、最低1時間は毎日飛ばさなくてはなりませんが、
今私の鳩舎では、旗を立てておけば1時間半以上飛んでいます。
旗を降ろした瞬間、条件反射によりものすごい勢いで入舎してきます。
呼ばれたら入舎するように習慣づけるにはエサの量を常に8分目の状態にしておくのです。
また、舎外中にフンの状態もチェックします。そのためにはどの鳩がどこにいるのか把握しておかなければなりません。

 舎外に重点を置いて調子を上げていくほうが、長距離には適していると思います。
短・中距離をめいっぱい勝とうとして訓練を続けていくと、距離が伸びないうちにピークに達してしまうような気がするからです。

 レース期間中の管理は、持ち寄り前とレース帰還後に、飼主がどれだけ鳩に調子の波を自由につけられるかにかかっています。



春季レース最初の持ち寄りまで
 
春季レースへ向けて、秋の500Kレースが終了してから、
休養していた成鳩(去年1000K帰りの若鳩含む)部屋の選手鳩を舎外にかけるわけですが、最初は思うように飛んでくれません。
                            
そこで、今まで1時間以上若鳩が飛んでいるとしたら、若鳩が30分位飛んでから、成鳩を表に出すようにしています。それから3週間位かけて若鳩と一緒に表に出しても飛ぶように徐々に慣らしていくのです。そしてレースのスタートする3週間位前になったら共に訓練に持っていきます。合同訓練に入る前に最低、1回から2回、40K(谷田部)と70K(石岡)程の距離を飛ばせば失踪は防げるでしょう。


 訓練から帰った翌日は軽めの舎外になりますが3日目からはいつも通りの1時間〜1時間半の強制舎外に戻ります。春のレースは期間が長いですから、ある程度日常の管理をきちんとやっていれば最初からそれほど気を使って、みっちり仕上げる必要はないと思います。距離が短いからといって気を抜いているわけではありませんが、とにかく600K位までは全ての鳩を投入しますので、先を考え、後は結果を待つのみです。

 レースの持ち寄り日は、朝の舎外が終わってエサをあげてから、午後の1時頃にエサを普段の半分だけ与え、夕方の持ち寄りに持っていきます。

輸送前にエサを与えてしまうと、消化不良の心配があるからです。車に酔う鳩も中にはいるでしょうから。
 
昔の長距離レースでは、朝の持ち寄りがあったのですが、その時はエサを与えないで持っていきました。
                                                       
帰還後から次のレースに向けて
 帰還後にはすぐエサをあげたいのは山々ですが、ある程度の鳩が揃ったらあげるようにしています。
一羽帰るたびごとにエサをまいていたら、最初に帰ってきた鳩が食べ過ぎてしまうからです。
と、言っても優勝を争うゲームですから、最初の帰還鳩には軽くエサをまいて呼び込み即捕まえますが、
2番手、3番手からはまず水を飲むまで待って、それから掴むようにしています。
                                                         
 記録程度の鳩は羽数が揃ってエサを与えている時に捕まえれば抵抗なくすみます。
ですから、普段から手からエサを与える程度に慣らしておくのです。

アッペン大麦を与える
                  
 その時、大麦を半分、普通の配合飼料を半分という分量の割合にして与えます。
レースに行く前と同じように普通の配合飼料のみをあげて、満腹に食べてしまうと、
そこに大麦が入っているのとでは、食べた後での疲労の回復の度合いが全然違ってきます。

 大麦というのは繊維質でものすごく消化がいいものです。
満腹になっても消化不良を起こさず、翌日にはコロコロのフンをしています。
                                                 
水浴と投薬
 帰還翌日は、薬を飲水投与(コクシプルスを与えたら、トリコモナスを次回の帰還の時にという具合で、
レースごとに交互に。400K帰還後からは3日間連続)で与えるのですが、その前に水浴をさせています。

 飲水器の薬の混ざった水は苦いですから、水浴とだぶらせてしまうと水浴の方の汚れた水を飲んでしまいます。
ですから距離の短い時にはその帰還当日に水浴させ、翌日薬を投与するようにしています。
見ていてバンバン水浴する鳩は期待が持てるでしょう。
                  
下げてから上げる

 帰還後3日位は大麦の割合が多いくらいでも結構です。その後、大麦をだんだんと減らしていくわけです。
全体のエサの量は変わりません。
そして帰還4日目には大麦と配合飼料の割合が4:6に、5日目には2:8に、
6日目にようやく配合飼料のみを与える割合に戻る事になるのですが、
この時、エサの量を半分に落とすのです。なぜかというと、レース鳩の調子というのは現状から上げていくよりも、
一度調子を下げて、それから再度上げていくという方が簡単だという考えが私にあるからです。
もちろん、レース帰還後の疲労を充分とってあげてからの話しです。

                                        
 そして、エサを半分に落とすと同時に、帰還後初めて表へ出すことにします。
この例は、レース間隔が2週間以上ある300Kレースから700Kレースまでの私のやり方です。
レース間隔が違えばローテーションを変えていくのです。

 まず、出した最初の日は鳩なりに飛ばせます。
その時は20〜30分位しか飛ばないでしょう。
次の日からは40分、50分と強制して延ばしていき、そして舎外時間を伸ばしていくと同時にエサも7分目、8分目と徐々に量を増やしていくのです。

 そして持ちより前の最後の3日間が勝負になります。10日目までにエサを基本の量の割合に戻るようにして、
10日目以降プラス2分目、プラス3分目とエサの量を増やしていき、丁度その時点で舎外が1時間以上飛んでいる状態でなければならなくなります。

エサが増えているのですから、今度はその分、10分でも20分でも余計に飛ばしこみますと、調子はグーんと上がり、動作が違ってきます横一線になって、ジグザグに、高く飛んでいくような状態にこの段階でいつももっていけるとは限りませんし、全体の選手鳩の調子が良い方向に揃わないと、こうはいきませんので、常日頃から1羽1羽の健康状態に充分注意して、このような状態に持っていけるよう努力しています。


抱卵について
 600Kレースの後から、それぞれの選手鳩のローテーションが違ってきますので調整が難しくなってきます。

 私の鳩舎は、成鳩用と若鳩用(これから1000Kに挑戦する)の2つに選手鳩部屋が分かれていますので、例えば600Kへいく鳩と、700Kへ行く鳩と部屋を分けて調節できるのですが、一つしか部屋のない鳩舎ではその点が特に苦労される所だと思います。

 さて、若鳩でもNシステムですと秋を飛んで春の700Kレース頃になればどうしても番いになってしまいます。それが自然なのだと思います。その卵が初卵の場合は、卵を持ち寄り3日前に取り除いています。卵を抱くことに熱心になる余り、疲労の方を心配してしまうからです。その時、卵を取り除いてしまうと同時にあてがってあげた巣皿を裏返しにしてしまいます。すると今度は次の卵を取ろうとしてエサを食い込みます。そして、持ち寄りの日にエサを食い込みます。そして、持ち寄りの日に朝エサを上げてから巣皿を表に戻してあげますと、ウーウーと鳴き声を上げますので、その合図でレースに持って行くのです。私の鳩舎では番いになっている鳩でも管理の関係上できるだけ、同じレースに出すようにしています。
                                   
 成鳩の場合はだいたい抱卵して1週間位が良いとされていますが、抱卵した状態でレースに参加した方が良い鳩と、途中で取り除いてしまった方が良い鳩がいると思うのです。

 抱かせて持っていった方が良いのは、普段人間の顔を見ると逃げてしまうのに抱き始めるとなかなか逃げないようなタイプです。抱卵している時に、舎外に出してもすぐに戻ってきてしまうような、そんなタイプは抱卵させたままで持っていったほうが良いでしょう。そういう鳩にもできるだけ舎外をかけたいのですが、時間を少し置いて、舎外の最後の30分位に表へ出すようにして飛ばしています。

 逆に、普段も神経質で、抱卵中も人間の顔を見るとすぐに逃げてしまうようなタイプは、抱卵向きではないと考えますので、若鳩初卵の時と同じように持ち寄り3日前に取ってしまいます。

 このような時は、鳩の性格を見て判断しています。Nシステムでは卵の調節が一番難しいことだと思います。メスの場合は特に、産んですぐですとかレースの直前まで卵を持っている時とかレース直前まで卵を持っている時は、ジャンプさせるか、そのまま休ませた方が良いと思います。

 逆に言えば、1000K以上のレースの時、番いの雌の方がメインの鳩で、自分の思うように卵の調節がうまく行けばある程度、期待が持てるということだと思います。
                                            
長距離レースに向けて

 さて、800Kまでのレースをそれぞれのローテーションで飛んで帰還した選手鳩を1000K以上の長距離レースに向けて調節する時、一ヶ月の間隔があるわけですが、鳩を静養させることにポイントを置いていますので、レースが終わっていないことを教えるためにも、短い所(30K〜40K)の訓練を最低2回程行い、無理な訓練はさせません。私の場合、舎外は基本的に1年中強制ですから長距離が控えているからといっても休ませません。

 昔の話になりますが、当時1000K帰りで日本新記録を作った時は、舎外を朝と夕方2時間ずつ、合計4時間かけました。エサは普段の延長で、大粒と配合飼料を混ぜた物を腹8分目に与えます。この時点ではエサの調整よりも、抱卵をいかにうまくコントロールできるかに神経を使っています。

 私の場合どの鳩も抱卵1週間くらいで行けるようにレース予定日から逆算して、卵を抱いている番いは卵をとってしまってから、再び産ませるのです。

 雄か雌の鳩のどちらかがメインの時は、ペアの一方が戻らない時のことを考えて、半Wシステム的にレースに参加しない鳩をつけておき、レースからかえったらその鳩が常にいるようにして、最終的に抱卵でもっていけるようにしています。

 狙ったレースにきちんと抱卵させ、なるべく毎回毎回抱かせないように、メリハリがつくように管理してあげることが大切です。

 メインの雄鳩に付け雌として雌鳩をあてがう場合は、もちろん子供を取れるような鳩でなければなりませんから、1年遊ばせてもいいなとか、無理して飛ばしたくないなというような鳩を選んでいます。
                                                     
 部屋の中には雄も雌も同じ数だけ、いれるようにしています。ペアの片一方が帰らない時などは、予備の鳩をつけるなどしてションボリさせないようにしていますが、このような場合、良い結果は少ないようです。

規則正しい管理を継続する

 若大将号(40−94101 BC  ♂  及川鳩舎基礎鳩)の妹で、二代目若大将号(69MS4666 BC  ♀)
という鳩が生後9ヶ月で1100Kグランプリ総合優勝した時の話ですが、
その前の700Kレースでは翌日の朝帰還という結果でした。

 遅生まれでしたし、最後の仔だったので当初から今年はここまでと決めていました。ですから東日本CHや稚内GNの申し込みは当然終わっていました。

 しかし、帰還後の調子があまりにも良いので、登録がまだ間に合う当時の1100Kグランプリに思いきって出したのです。二代目若大将は悪天候のレースにもかかわらず見事期待に応えてくれたのでした。私がその頃まだ学生という事もあり、かなり無理をしたと思うのですがその時の経験とも重ね合わせてみて、600K、700Kレースで、速く来た順番よりも、極端な言い方をすれば遅く来た順番に次の長距離は戻って来るということが比較的多いように思うのです。

 その点を、マークする時の参考にしています。逆に、700Kレース位の距離までを速く帰還したトリには、そこでストップさせた方が良いとも言えると考えています。
                                                                
 私の鳩舎では、比較的エースピジョンといえるようなトリが多いので、特に短距離の場合200Kレースでマークする時、先程とは逆に100Kレースを帰った順番につけていっています。規則正しい管理を続けていれば、短距離の場合ですと、同じトリが続けて同じような順位にくることが容易なのだと思います。

 私も励行していますが、レース表を作り、100Kから1000K迄の連合会、総合と成績を書き込んでいっています。また日記のようなものにトリの状態等気がついたことを書き置いています。かれこれ30年以上続けていますが、記憶だけではどうしても忘れてしまうことが多いですし、書き込んでおけば色々と役に立つものです。

例えば舎外時間はその日、無理なく何時間位飛んだとか、この鳩は抱卵何日目だったとか、
成績の良い鳩を拾ってみて、何月頃生まれたかデータ−を取ったりですとか・・・。

 鳩によっては、決まった距離が速かったりしますので、記録をデータ−としてまとめれば、充分マークする時は利用できると思うのです。

 これらの事からも、レースに勝つための、まず一番の要素は、毎日の努力を積み重ねて規則正しく管理していくことだと考えています。

 それぞれの鳩舎事情によって飼育環境も、管理にかけられる時間なども違ってきます。生活のリズムに合わせた、無理のない管理を継続する事が力になってきます。私の講座を読まれて、少しでもお役に立てて頂ければと考えています。

あくまでも理想を追求する!

 1000Kを帰らなければ鳩じゃない、という風潮がまだあった頃、
ある程度の自分で納得いく帰還を1000Kレースで果たすことができたので、
私の目標も、中距離のスピードレースに重点が移っていきます。もともと300〜700K位の距離が得意な系統ですが、
若大将系のスピードにパワーアップをとヤンセンやD.マタイス等の異血を注入したのもそのためです。

短距離から長距離まで一つの系統でコンスタントに飛ばすことができる、これが若大将系の一番の特長であり、
それは私の希望でもあります。
とにかく1000Kまでは同じトリで飛ばしたい。あくまでも短距離から長距離まで速いトリを追求しているのです。

 若大将号がそうだったように、短距離レースから抜けてきて、逆にいえば短距離でスピードが出なければ長距離も勝てない。
1000Kが分速レースになった場合には、300K〜700Kが速いトリでないと上位に来れなくなってきたように、
再び長距離レースへの新たな魅力を求めるように変わっています。



(
*^_^*) 岩田系とオペル(O.ロビンソン作)が、若大将系との最初のあたり配合です。ベルギーへ渡って、直接鳩を導入するにしても、記録よりも何より、若大将号に似たものを選びました。若大将の近親に異血をかけて飛ばす場合、めったに外れることはありませんが、同じく近親で固められた岩田系との相性が、特にずば抜けていました。

 自分の系統を確立しようと思えば、いつまでも途中にいれた異血に頼るわけにいきません。若大将系とかけて出た良い仔の方を残していくのであって、いくらその血が良くとも執着せず、あくまで若大将がベースでなければならないのです。

 若大将系に中距離でのパワーをつけるために70年後半に導入したパワーアップ号は、最初にかけた2代目との間にできたオブコース若大将号の活躍で、
その異血の優秀さが証明されました。導入した異血に若大将系をかけ直仔を飛ばしてみて、その血の優劣をまず見極めるのです。

 そこで今度は、代を落として間口を広げる意味で、若大将の血が入っていない他の異血ブルースチレーンとかけ、その直仔(パワフル1号 ロッキー号近親)種にします。それたに再び若大将系をかければ飛ぶトリが出る確率は高まります。ニュータイプ若大将号の場合は、祖母にあたるパワフル1号に、異血のカポン3世をかけて生まれたカポンデカ号に、二代目若大将を配合してできたトリです。

 結果的に、スーパーセブン若大将の母、若大将タイプ号は、二代目の直仔×孫の配合になるのです。

 若大将タイプ号はエースP総合2位になっていますが、血がかなり濃くなったということで、種にした時に最初は異血をかけていました。
しかし期待のわりに直仔がなかなか一位が取れない。それならと、机上の計算は無視して、もう一度若大将の濃い血をかけてみたところ、一番仔がぶっちぎりの総合優勝。この時、やはり若大将の系統は、近親同士でかけた場合の方が味が出ると再認識したのです。

 私はそれまで、若大将系の1/4を3割、1/2を3割、近親の濃いものを3割、残りの1割を異血だけのトリというように選んでレースに参加させてきました。

 あらゆるレースに参加させてきました。あらゆるレースに順応できるようにとの配慮だったのですが、今年の場合ですと5割以上が若大将の近親です。

 メインの種鳩に交配させる雄、雌を変えて異父・異母兄弟を10羽ほど作り、その兄弟配合でできたトリが現在の選手鳩の(メインの鳩の孫で飛ばす)主流になっています。

 
近親で作ったトリが、その親よりも小さく詰まってしまったり奇形に出たり、親よりも性能的に劣ったり、兄弟の成績に安定性がない等の傾向が見られたら、近親には向かない系統だということです。親よりも外見的に良いものが出ないと飛ぶ確率は低いでしょう。また、仔出しの問題で、親に似てこない系統というのもあるのです。

 後、余所から、種鳩を導入する場合、年齢には非常に敏感になりますが、自鳩舎の種鳩にはかなり鈍感になってしまうものだと思います。

若い種鳩から生まれた仔の方が、スピードが出る可能性は高いですから、メインの種鳩、柱になる種鳩の世代交代がスムーズにできるのが理想です。メインの鳩が高齢になった場合、意識して当歳鳩の中で一番良いトリをかけるようにしています。まる一年位たったものが良いと思います。


 雌の場合、記録鳩は一年以上遊ばせたものでないと仔は飛ばないと言われますが、それは普通の鳩です。正当な方法なのでしょうが、飛んでからすぐに交配させても良い仔を産めるだけの余力が充分残っているような鳩でないと、血を繋ぐことは出来ません。
二代目若大将は生後9ヶ月で、5月の1100Kグランプリに総合優勝して、
その翌月に交配してパーフェクト若大将を誕生させました。
                                                    
 私は毎年11月、種鳩を作出するために、自分の理想とする4ペアを選び交配させています。
直抱きさせずに、別に4ペアの仮親を使い、育雛もそのペアにまかせています。結果的に種鳩作出用のペアは、自然と自分の好きな若大将の近親同士を選ぶことになってしまいます。

 スーパーセブン若大将号の父、スーパー怪物若大将も、種鳩用に作出しました。ヤンセンが1/2入った怪物若大将号のパワーとスピードに、スーパースター若大将号のスピード(200K、300K連続総合優勝)をかけ合わせた3/4若大将です。スーパーティミード若大将号の母スーパーガール若大将も種鳩用に作出したトリです。

 父のティミード号の体型は、長めの長距離タイプですが、その直仔はティミードに似ず、必ず若大将のタイプに出てきます。ティミード号もそうですが、海外の記録鳩というのは、非常に人に慣れているようです。自鳩舎の鳩もそれくらいに慣らしたいといつも思っています。

 この鳩とこの鳩を交配させればこんな鳩が出るだろう、
こんなトリを作りたいなと、イメージに浮かんだものが形に現れてくれれば飛ぶ確率は高くなるでしょうし、そうなるように作出に取り組んでいます。

 若大将タイプ号は、若大将の理想タイプに作られたということでその名前をつけました。母親のニュータイプは、D.マタイスの1/2ということで、雌のわりにかなり体が大きくなっています。若大将に今まで見られなかった新しいタイプということでその名がつきました。若大将の近親をかけることにより、本来の若大将の形にもどった若大将タイプ号も、スーパー怪物若大将号と同じように、3/4若大将の血が入った近親配合になっています。

 このように、1/4だけ異血の入った近親の場合に、比較的よいトリが多いようです。理想のトリを作るためには、たとえ成績が良くとも自分のイメージに合わないトリは、できるだけ淘汰の対象にしています。若大将号の父、若大将パパ号も、ママ号と配合する以外は、仮親として使用しました。パパ号に似てしまうと、羽色がきれいにでるとか、でかくとも軽いという長所以外が、スピードはあるけれども、波のある仔が多かったということもあり、当時、どうも好きになれませんでした。

今から思えば、あのコーヒーブラウンの目は源鳩に最も適した最高のトリだったのです。明るく光った柿目が好きだったし、そのころまだ鳩を良く知らなかったこともあり、大事にしなかったことを後悔しています。

 両親がいてはじめてその血が仔に伝わるのですが、若大将から続く、ゴールデン、ナショナル、パーフェクト、3世、ハーフの父系は若大将ママの血の影響を強く受けた理想の、代表的な雄鳩になっています。
                                              
 イメージの合わなかったトリで、最も飛んだのがM若大将号(66YB0170M ♀)でした。若大将号と自然に番いになったユートピア号との間に出来た一番仔です。レースで落とそうとしても必ず帰って来て、最終的に1000Kに優勝しました。

 その頃一番若大将号の近親だったナショナル若大将とかけてできた仔が、国際鳩舎700K菊花賞当日一羽帰り全国優勝鳩菊花号です。しかし、M若大将の血は現在ほとんど残っていません。

 若大将系の母系で現在中心になっているのは、ニュータイプへとつながる血と、ダイヤモンドシルク若大将から流れるスーパースター若大将の血です。

 スーパースターも85年生まれですから、現在その直仔10羽程種鳩にし、近親配合にして作出しています。そして、そのスーパースター若大将号の孫が自鳩舎の次代の主流になりつつあります。若大将の直仔を種にして孫で飛ばしたのが、第1期の黄金時代です。

 二代目若大将が生まれ、その直仔パーフェクト若大将の代に移り、妹のニュータイプ若大将等との近親交配による子孫が飛び、現在スーパースター若大将の活躍へと繋げることができました。


 近親は近親で濃く作り、異血は異血同士でかけて、現在若大将系の濃い近親を7割、残りの3割を異血だけで作ったトリでレースにのぞむような体勢になりつつあります。また異血が最近多くなってきたこともあり、買ってくるよりも自分で理想の異血鳩を作るようにもしています。

                                                   
 振返ってみると、若大将系を今日まで保てた基本は規則正しい管理につきます。そして系統に恵まれたこと、あくまでも理想を貫いてきたことだと感じています。

 選手鳩を残す場合にも、その両親からくる自分の先入観をいったん捨てて、自分の目を信用することです。若鳩の場合、ヒナの時にその親を確かめないうちに、平等な見方で自分の好きなタイプを選ぶようにしています。その結果、残ってきたのが、今までずっと追いつづけてきた若大将のタイプのトリだったのです。

 結果的に、自分の選択は間違っていなかったのだと信じて今日に至っています。その流れは系統を見ればわかるように、戻し交配の繰り返しです。そして現在の若大将系を代表するペア、スーパーセブン若大将号と、スーパーティミード若大将号が誕生しました。ともにスーパースター若大将号の孫にあたります。

 そして、この2羽を交配させれば若大将系近親の3/4血量になります。直仔は選手鳩としても、種鳩としても、私の計算の上では成功するはずです。

 昔は兄弟配合の近親を異血で割って一代雑種にした直仔を飛ばし、また近親をかけて戻し交配するなかで、異血と近親の微妙なからみをが重要視してきました。その過程でメインの種鳩に据えられるような鳩が出たら、交配相手を変えながら仔をとり、生まれた兄弟姉妹で又近親配合をという具合です。

 交配させるペアの、同じ長所を可能な限り引き出そうとする私の配合方法は結局、若大将系をどのようにしたいのかという私の理想を実現させようとした結果であって、近親配合をより強調させる意味も含んでいます。
                                                               
 その時代時代によって当然好みは変わりますし、トリの体型も意識して変えてきました。
 スーパーセブンとスーパーティミードは、現在私が描いている雄と雌の理想の体型です。